甘いヒミツは恋の罠
※ ※ ※


(さぶ……)


 エレベーターから出ると、ひんやりとした寒さが首筋を撫でて紅美はきゅっと上着の襟を締めた。


 すると――。


「瑠夏~早く、待ってたんだから」


「ったく、仕事なんだからしょうがないだろ」


 エントランスを出ようとしたところで会いたくない人物に会ってしまった。


(朝比奈さんと……また違う女の人だ)


 朝比奈の腕に絡みつきながら小奇麗な女性が車に乗るように催促している。


 紅美は、朝比奈たちが去るまで物陰に隠れてその様子を窺いながら、今日、朝比奈に言われた言葉を思い返した。




 ――お前にはプライドがないのか。
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