甘いヒミツは恋の罠
「僕も元デザイン部の人間だったから気持ちわかるよ、そういう時は気分転換が一番いい」


 気分転換といっても、こんな高級レストランでは逆効果だ。むしろファミレスでオムライスを食べていたほうがよっぽどリラックスできる。


(でも、大野さんはファミレスって感じじゃなさそうだよね……)


 大野はまた朝比奈とは違った雰囲気を持っていて、顔立ちが整っていることには相違ないが、御曹司オーラが常に漂っていた。


「ところで、紅美さんのそのネックレス、とても綺麗だね」


「あ、これですか?」


「うん、この間、初めて会った時も身につけていたね。大事にしているアクセサリーなのかな?」


「はい、私の祖母からもらったもので――」



 ――そのネックレスについてなにか聞かれても何も答えるんじゃないぞ



 その時、ふいに朝比奈の言葉が脳裏を過ぎった。
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