甘いヒミツは恋の罠
「大丈夫だよ、ただの興味本意だから……それに、次回のデートに繋ぐための口実でもあるし」


(デ、デート!?)


 紅美が驚いて目を丸くしていると、大野は少し照れくさそうに言った。


「紅美さんは……僕の気持ちには気づいてる?」


(いやいやいや! これは何かの間違い! 気持ちって? 友達としてだよね? まさか――)


「お、お友達として……ですよね? はい、それなら喜んで」


 大野と恋人として付き合うつもりはない。けれど、これからどうなるかなんてわからない。


(私、ずるい……のかな?)


 そんなことを思っていると、大野が仕方なさそうに小さく笑った。


「焦ってもだめってことだね。けど……僕のこと、少しでも男として見てもらえるようにするから」


 そう言いながら大野がそっと紅美の手を握った。手の甲にじんわりと温かなぬくもりが伝わってくる。


 気を引き締めても、大野のキラキラした笑顔に思わずとろんとして顔が緩んでしまう。
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