短編集
 


立入禁止の紙が憎らしく、睨んでしまう。


『夢に言いたいことが……明日言う……』

そう言ってくれたのに、もう彼と会話することができなくなってしまった。



肩を落として俯いた。


すると、ベニヤ板の下の方に、白いチョークのメッセージを見つけた。



『こっち』と書かれ、矢印がついている。


矢印は地面に向いていた。


足元のアスファルトを見ると、矢印を踏み付けて立っていた。



慌てて、一歩後ろに下がった。



でこぼこ継ぎ接ぎだらけのアスファルトに書かれた矢印は、点々と団地の奥へ続いていた。



白いチョークの矢印を辿って歩く。

2号棟と児童公園の間の狭い歩道を、まっすぐ進み、

矢印は2号棟の角を曲がった。



< 17 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop