短編集
立入禁止の紙が憎らしく、睨んでしまう。
『夢に言いたいことが……明日言う……』
そう言ってくれたのに、もう彼と会話することができなくなってしまった。
肩を落として俯いた。
すると、ベニヤ板の下の方に、白いチョークのメッセージを見つけた。
『こっち』と書かれ、矢印がついている。
矢印は地面に向いていた。
足元のアスファルトを見ると、矢印を踏み付けて立っていた。
慌てて、一歩後ろに下がった。
でこぼこ継ぎ接ぎだらけのアスファルトに書かれた矢印は、点々と団地の奥へ続いていた。
白いチョークの矢印を辿って歩く。
2号棟と児童公園の間の狭い歩道を、まっすぐ進み、
矢印は2号棟の角を曲がった。