短編集
6棟並んだ市営住宅が見えてきた。
50年前に建てられ、外壁も屋根も古く汚れている。
建物の隙間に見えるのは、壊れた自転車しか残されていない、空っぽの駐輪場に、
誰もいない寂れた公園。
その風景を目にした途端、たまらず座席から立ち上がった。
最近引っ越した新しいマンションは、5つ先の駅だけど、
我慢できずに、3駅目で下りてしまった。
駅の改札を出て、小走りに通りを歩く。
八百屋に魚屋、お花屋さんに雑貨屋さん。
パン屋さんと郵便局と……
小さな小さな商店街は、少し前まで賑やかだったのに、買物客が激減していた。
お肉屋さんのシャッターは下りたままで、
『閉店しました』と淋しげな張り紙がされていた。