短編集
年下の男の子に違いないと思い込んでいたから、
『啓太くんが好き』だと書いてしまった。
恥ずかしくて、顔が真っ赤になる。
驚きと恥ずかしさと、会えた喜びと、
色んな感情が一気に押し寄せ、心がついていけない。
目に涙が溢れ、ポロポロとこぼれ落ちた。
急に泣き出した私を見て、彼が慌てた。
「夢、ごめんっ!
騙すつもりはなかったんだ!
年下だと勘違いしてっから、言い出せなくて……」
「啓太くん……
字が下手くそ過ぎるよ……」
「…… ごめん」
夕暮れのベンチに並んで座り、色んなことを話した。
高校のこと、家族のこと、団地の想い出……
啓太くんとこんなに話したのは、いつ以来だろう。
それはきっと、幼い時以来。
恋をしてからは意識し過ぎて、まともに話せなかった。