短編集
会話が途切れて沈黙した時、啓太くんが恥ずかしそうに言った。
「俺、夢に避けられていると思ってた。
目が合っても逸らされるし、全然話さなくなったから……
なぁ、あれって本当?
黒板に書いてあった、俺のことが好きってヤツ」
「うん……好きだよ……」
恥ずかしいけど、正直に頷いた。
言えなくてずっと後悔していた“好き”の二文字。
やっと伝えることができた。
俯いている私の顔は、真っ赤。
チラリ横を見ると、啓太くんの横顔も赤かった。
啓太くんと目が合った。
私の方を向いて、彼も想いを伝えてくれた。
「俺も好き。
ずっと夢が好きだった」
「…… 春香ちゃんじゃないの?」
「黒板にも書いてあったな。
誰だよ、春香って」
「私の家の、下の階に住んでいた子だよ」
「ああ、あいつか。
まだ小学生だろ」
「もう中学生だよ」
「俺は夢が好き。
恥ずかしいから、何度も言わすな」
「うん…… 分かった」