短編集
「はぁ…… 可愛い……」
溜息と共に漏れた言葉に、隣に座るミサが反応した。
「またアカリ見てたの?
あんた、ヤバイよ。危ない道に入る一歩手前じゃん。
今度合コンセッティングしてあげるから、男に目を向けな」
「やだよ合コンなんて。
好きな男はちゃんといるし」
「それって、アカリの彼氏でしょ?
それもヤバイ。アカリの物だから好きなだけじゃん。あんたはアカリを……」
ミサの話を遮り、新米講師が声を荒げた。
「そこ!
私語を慎みなさい!」
自分の分かりにくい講義を棚に上げ、顔を赤くして怒る新米講師。
聴いて欲しければ、もっとマシな授業をしろと思いながら、
「すみませんでした」
と一応謝っておく。
3列前のアカリが振り向いた。
私を見て、クスリと笑った。