短編集
変わってしまった商店街を抜け、
目的地に急ぐ。
少し前まで暮らしていた団地に行きたかった。
近づくにつれ気持ちが急いて、走るスピードが上がる。
たどり着いた時には、ハアハアと息が切れていた。
荒い呼吸を整えてから、団地に踏み入る。
同じ形の、6つ並んだ集合住宅。
間にある児童公園を通り、元の自宅に向かう。
“2号棟”と書かれた3階建て横長の建物に、10日前まで住んでいた。
古く汚れたコンクリートの外壁にホッとして、心が安らぐ。
ガラガラ、ギギギと軋んだ音を立て、外玄関の引き戸を開けた。
中は薄暗く、湿っぽい匂いがする。
引っ越した時と匂いも景色も同じに思ったけど、
すぐに違うと思い直した。