短編集
団地の閉鎖と取り壊しが決まり、
住人達が一斉に引っ越していった。
無人の廃墟となった市営住宅は、静か過ぎて少し怖かった。
階段を上る。
3階の住み慣れた部屋の前に立ち、ドアノブを回してみた。
当然だけど、開かない。
表札の跡だけ残った開かないドアに、
ここはもう私の家じゃないのだと、改めて思い知らされる。
溜息をついて、コンクリートの階段をゆっくりと下りた。
3階と2階の間の階段の窓から、外を見た。
目の前は、児童公園。
この2号棟と3号棟の間隔は他より広く取られ、
小さなサッカースペースと、ブランコや滑り台などの遊具が置かれていた。
いつも団地の子供達で賑やかだった公園。
私も小学生の頃までは、友達と駆け回っていた。