青い記憶



「ただいま・・・」

いつもより、重く感じた玄関の扉を
開けて家に入る。


「あぁ、おかえり
ちょうどよかったわ!」


パタパタと忙しなく
スリッパの音をリズミカルに鳴らしながら

廊下に顔をひょっこりとだした
お母さん。


「今日、お母さん職場の人とお食事行っちゃうから、誠也(セイヤ)とパパよろしくね。
カレー作ってあるから、よそってあげてね。」


誠也は私の弟。

3つ下で、中学生になった。

最近、反抗期なのか、何かとつっかかってくる。


「えぇ?みんな自分でできるでしょ?
誠也だってもう小学生じゃないんだから」

なんで私にばかりやらせるかなぁ。


お母さんはリビングにある

ちんまりとしたドレッサーに腰掛けると
ピアスを耳につけ始めた。

「そう?それなら自分達でやらせれば
いいわよ。あ、でも、お父さんにはよそってあげたら?
愛梨がよそってあげたら一層美味しく食べてくれるわよ」

私はソファにどさっと転がり
深いため息をつく。


「・・・そうゆう気分じゃないの。」

お母さんはドレッサーの鏡越しに
私をみると少しきょとんとした。

「あら珍しいわね、なんかあった?
明日誕生日だっていうのに
浮かない顔して」


・・・ん?

誕生日?誰が?

明日・・・4月10日・・・

私の誕生日やんけ!!

「まぁどうせ、歩くんと喧嘩かなんか
したんだろうけど、そうだったら早く
仲直りしちゃいなさいね?
誕生日パーティーの空気悪くされたら
困るもの」


上田家と大内家は毎年
みんなで一緒に誕生日を祝う。


お母さんの言う通り
仲直り、しなきゃなぁ・・・。

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