カタコイモノガタリ。
5月

新しいクラスにも馴染みはじめて、みどりは生徒会長の仕事もだいぶ慣れてきたみたいだ

帰り道、みどりと別れたあと いつも通りのルートを歩く。

5月といってもまだ肌寒い。早く秋になって欲しい。秋は暑くもなければ寒くもないし、私の好きな季節。

「美夜」

後ろからやんわりとしたトーンで声をかけられた。

あぁ、私はこの声をよく知っている。ずっと聞いてきている、けれど1度もその中には 私の望んでいる『想い』を込めた呼び方は1度もしてくれない。



できない?

私が
『そういう対象』に見えないから。

ゆっくりと振り向けば、カジュアルな服装に身を包んだ男性が立っていた。
約180cmくらいの、優しい目元をして、にっこり私に向かって微笑んで

もう1度、私の名前を呼んだその人は

「お帰りー美夜〜」

私の頭を、妹にでもするように撫で回した


「……ただいま 桃希兄さん」

無理やりつくる笑顔には、もう 慣れてしまった。
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