カタコイモノガタリ。
小山家と緑川家は昔から仲が良く
子供同士の仲も良かった

え?昔話かって?まぁ、そう言われるとそうかもしれないけれど、違うと言えば違うかもしれない。

とにもかくにも、私と桃希兄さんは小さい頃から一緒だった

小さい頃の私は、桃希兄さんに頼りっぱなしで、本当に兄のように慕っていたのが、今でも、ううん。昨日の事のように覚えている。

ケガをした時、熱を出した時、いじめられた時、いつも私を助けてくれたのは桃希兄さんだった。

この頃は、たんに憧れしかなかったと思う
私が恋心と自覚したのは3年前になる

それはとても鮮明に覚えていて
それはとても簡単なことで
それはとても単純な理由で
それはとても些細なことで


桃希兄さんが知らない女の人と、楽しそうに喋っているのを
偶然、たまたま、目撃してしまった。

その時の私の感情はとてもシンプル。

嫉妬


羨ましかった。桃希兄さんの隣にいる女性が
羨ましかった。桃希兄さんを独り占めする女性が
羨ましかった。桃希兄さんに女として見てもらえる女性が

胸がズキズキして、心臓を誰かに鷲掴みされたような気分になった。あまりにもどす黒い感情がぐるぐるしてきて、私は

耳を塞いだ
目を塞いだ


桃希兄さんへの全ての女性を

シャットアウトしてしまった。


隣にいるのは親戚か誰かだと
血縁者だと、自分に言い聞かせて何度も繰り返した。

私は何も見ていない
私は何も聞いていない

それが、恋心だと自覚した15の春

そして、現実と向き合う事になった

17の冬


桃希兄さんが、彼女を紹介してくれた。

マリさんという、すごく綺麗な女性だった。

勝てない
負けたくない
負ける
勝ちたい

矛盾しまくりの感情と、今まで1番近くにいた女の子は自分だと思っていたから。

その自意識過剰さに自己嫌悪した。

身勝手さに

自分は浅はかだと思い知らされた。

その日から、コンタクトをメガネにかえて
髪の毛はおさげにして

あまり、目立たないように
自分の位置を示すために、自分自身から桃希兄さんを拒絶した。
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