冷たい上司の温め方
掃除に何度も来ているから、私の方は部長を知っている。
恰幅のいいオジサマだ。
「女の子、なのか?」
「はい。話してませんでしたか?」
唖然とする部長に、冷静な楠さん。
ふたりの間の温度差を感じる。
笹川さんの『意外』も、私が女だということかもしれない。
「大丈夫か?」
「なにも問題ありません」
きっと部長はリストラという大仕事に、女の子が係わるなんてと心配してくれているのだろう。
当の本人は、まだその事実を楠さんから聞かされていないのだけど。
だけど『なにも問題ありません』と言われたということは……楠さんにそれなりに評価してもらえているということかな?