冷たい上司の温め方
「まあ、頑張ってくれたまえ」
「はい」
部長のこの反応。
私の想像以上に過酷な仕事なのだろうか。
それにしても、他に新人はいないのだろうか。
こうしてあいさつに来たのは私だけのようだ。
部長にあいさつを済ませると、フロアを改めて見渡してみる。
総勢一万人を超える従業員の人事は、すべてここで賄われいてる。
私のその仲間入りができるんだ。
自然と気合が入る。
フロアはパーテーションで大きくふたつに分けられていた。
「あれ、新人さん? どこかで会ったことがあるような……」
「そう、ですか?」
楠さんに自分のデスクに連れて行ってもらう途中で、声をかけられたけど、適当にごまかした。
まさか、掃除をしながら仕事する様子を観察していましたなんて言えない。
こっそり盗み見していたようで。