冷たい上司の温め方
「麻田さん。改めてよろしく」
三課にはデスクが三つ。
私と笹川さんが向かい合っていて、横に楠さん。
遠藤さんに聞いていた通り、たった三人のようだ。
「どうぞよろしくお願いします」
「いやー、うれしいよ。
もうひとり増えるって聞いて、楽しみにしてたんだ」
笹川さんは、スポーツマンっぽい雰囲気で、とてもさわやかだ。
髪は短めで、わりとがっちりとした体つき。
クールな印象の楠さんとは違って、人懐こい感じがする。
「麻田」
笹川さんとあいさつを交わしていると、楠さんがぶっきらぼうに私に声をかける。
「はい」
彼の方に顔を向けると、銀縁メガネに触れた。
「麻田には早速仕事をしてもらう。
あいさつの仕方や名刺の出し方なんて見て覚えろ。
一応入社前にはなるが、人事の仕事は社員の情報がすべて見える。
守秘義務が伴うことを忘れるな」