冷たい上司の温め方
悪かったわね、人事で。
かっこいい取締役なんて、妄想の世界だけだから。
全員おっさんだわよ。
上層階の掃除もしていた私は、取締役と名のついた人を何人も見かけた。
だけど、そんなにキラキラした世界ではない。
どうやら数日前にオリエンテーションがあったようで、もう仲間の輪ができている。
私は……誰ひとりとして知っている人がいなくて、なんだか寂しさも覚えた。
入社式は形式的なもので、もうすでに会社の内部に顔を突っ込んでいる私は、特に新しいことを聞いたわけでもなく、あっという間に終わった。
「満足か?」
人事に戻ると、楠さんが話しかけてきた。
「なにがですか?」
「新入社員気分だよ」
「気分じゃなくて、新入社員ですから」