冷たい上司の温め方

とはいえ、もう長く掃除を手伝っていたからか、他の新入社員とは意識が違う気がした。

入社式で、これからについて目を輝かせて話している人もいたけれど、私はすでに現実を見ている。
良い意味でも、悪い意味でも。


「あんまり麻田さんをいじめないでくださいよ」


笹川さんは優しい。
いつもこうやって庇ってくれる。


「まぁ、いい。麻田は一課の手伝いに行って来い」

「一課ですか?」

「そう。新人君たちの書類集め。
これから一課のやつが説明に行くから、ついて行って雑用して来い」


私だって、本当は新人の方にいるはずなんだから。

仕方なく席を立つと、笹川さんが「頑張って」と声をかけてくれた。


手伝いは結構大変だった。
これだけの人数が集まると、話を聞いていない人も多い。
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