冷たい上司の温め方
ドキドキしながら一歩踏み入れると、「人事から来ました」と声をかけた。
目の前には、おそらくケンカをしていたであろうふたりが、顔を真っ赤にしながら互いにそっぽを向いている。
「あの……坂上課長は……」
私が一番近くにいた女性社員に声をかけると、「あぁ」と言いながら顔をしかめる。
「あの、人……」
その社員が教えてくれたのは、ケンカしていたひとりの方だ。
うわ。最悪の時に来た。
少しでも時間を稼ごうと、もう一枚の書類を見て再び尋ねる。
「それでは、吉田課長は……」
私が尋ねると、思いっきり眉間にしわを寄せた女性社員は、なんと、ケンカ相手を指差した。
有り得ない……。来るんじゃなかった。
そう思ったけれど、このまま出ていくのは不自然だ。