冷たい上司の温め方
「なんだと?」
しまった、と思ったけどもう遅い。
今更引き下がれない。
「議論とケンカは違います。議論すべきです」
「誰に向かって言ってるんだ!
話にならん。上を呼べ。お前、何課だ?」
完全に怒ってしまった吉田課長は内線電話を手にしている。
まずい。楠さん、怒るだろうな……。
だけど、もう仕方がない。
「三課、です」
「三課?」
私が三課だと告げると、吉田課長が唖然とした顔をしている。
「首切り、屋なのか? あそこに女がいたか?」
「えぇ、新人です」
その時突然楠さんが現れた。
「このフロアで大声がすると苦情が来まして。で、うちの新人がなにか?」
楠さんは自分よりずっと年上であろう吉田課長を、メガネの下の切れ長の目でにらみつける。
この目力、迫力がありすぎる。