冷たい上司の温め方
「さ、寝ましょう」
「やらないといけないことがあるんだ」
「仕事ですか?」
私が尋ねると、小さく頷く。
「楠さん、私、もっと頑張りますから。
楠さんのシモベでもなんでもいい。
もっと役に立てるように頑張りますから、ひとりで全部しないでください。
もっと笹川さんや私を使ってください」
今だって十分こき使われてきた。
だけど、精神的な負担という意味では、楠さんがすべてかぶっている気がする。
矢面に立つのは楠さんで、笹川さんですら彼に守られている。
重要な決定は必ず楠さんが下し、それを伝えるのも楠さんのようだ。
首切り屋イコール三課ではなく、楠さんなのだ。
「言うな」
「はい、言います。
全部自分で背負うとか、楠さんって、ドMでしょー」
「プッ」
楠さんが今までで一番楽しそうに笑ってくれた。