冷たい上司の温め方
「そうだな」
優しい笑みを浮かべた楠さんは「月曜から覚悟しろ」と私に告げて寝室に向かう。
「麻田。助かった」
寝室のドアを開けた彼は、ぼそっとつぶやいた。
「おかゆ作ったら帰ります」
「悪いな」
初めて楠さんの人間らしいところを見た気がする。
私はおかゆを作ると、彼の部屋をあとにした。
夜になってメールを入れると、熱が下がったと報告があった。
そして……。
【おかゆ、うまかった】
という珍しく優しい一言に、ニヤけてしまった。
楠さん、やっぱり冷たいフリをしている気がする。
そういう雰囲気でないと、リストラなんて仕事、できないのかもしれない。