冷たい上司の温め方

「私、秘書課を希望だったの。
研修だって行ったのに、ふたを開けたら人事で……。
運悪すぎじゃん、私」


山際さんは泣きそうな顔をしている。
でも……。


「あなたが秘書課を外された理由は、なんとなくわかりました」


少なくとも、運ではないだろう。


「なに言ってんの？」


首をかしげる山際さんは、どう考えても態度が良くない。


「私とあなたはいわば同期。
だけど、こうしてまともに話したのは初めてだし、特に親しいわけでもない。
それに、今日は私が教える立場」

「それが？」

「まず、その言葉づかいが良くない。敬語、使えない？」


私がお説教できるような立場じゃないことはわかっている。
でも、誰かが言わなくちゃ。


「はっ？　別に上司じゃないし、いいじゃん」

「普段から心がけてないと、とっさには使えない。
それに、そのふてぶてしい態度。見ていて気持ちよくない。
秘書課でもそうだったんじゃない？」