冷たい上司の温め方
村川さんに抱きつかれている笹川さんを想像して、思わず吹き出す。
仕事のあとのビールは、どうしてこんなにおいしいのだろう。
笹川さんと話も弾み、料理の味付けも絶妙で大満足だ。
「だけど、うちに麻田さんが来てくれて嬉しいよ」
「そんな。山際さんの方が美人だし、男の人受け良さそうじゃないですか」
こんなジャジャ馬。
いくら山際さんの態度を"ちょっと"と思っても、上司の前ではそれなりにやっているようだし。
私とは違い、要領がいい。
「いや。そこは麻田さんだろー」
「あれ、お世辞全開?」
「あはは」
高らかに笑った笹川さんは、突然真剣な顔をして私を見つめる。
「正直で一生懸命な女の子って、魅力的だよ」
「えっ?」
「はー。ちょっと酔ったかな。そろそろ送るよ」
笹川さんは私をタクシーで送り届けて帰っていった。