冷たい上司の温め方
「楠さん、お酒飲めないんだ……」
新しい発見にニヤけながら暗い部屋に電気を灯す。
なんのスキもないように見える楠さんでも、苦手なものがあるんだ。
ちょっと弱みを握った気分だ。
それにしても、疲れた。
人事の仕事は思ったより、気持ちが疲れる。
嫌われるからというだけではない。
自分のすることが、誰かの運命を左右するかもしれないというプレッシャーがハンパない。
いつもより熱めのお湯を張った風呂に入ると、ベッドに倒れ込んで眠ってしまった。