冷たい上司の温め方
「あっ!」
思い出した。
ここ……遠藤さんに、清掃社員は"石"なんだと教えてもらったトイレだ。
あの口の悪い女がいた……。
「はぁ」
なんとなく気が重い。
他のトイレでもいろんな愚痴を耳にしたけど、ここほどひどかったところはない。
一瞬躊躇したけれど、仕方ない。
私はトイレに入った。
幸い、先客は誰もいない。
さっさと済ませて出ようと思ったとき、入り口から足音が聞こえてきて、出るタイミングを逸してしまった。
だって……。
「ざまぁ。あの女、部長に叱られてたわ」
「ちょっとやりすぎたかもよ。あの女、泣きそうな顔してたもん」
この声、聞き覚えがある。
あの時の女だ。
「それが面白いくせに」
「わかる?」