冷たい上司の温め方
思わず聞き耳を立てた。
清掃社員でない私が出て行けば、おそらく黙ってしまうだろう。
しかし、ムカつく会話だ。
やりすぎたって、なにをしたんだろう。
「辞めちゃえばいいのに、あの女」
「ちょっと、誰かいる」
そこまで話したところで、私が奥の個室にいることに気がついたようだ。
バタバタと出ていく音がして、気が抜けた。
あのふたり、なにかしたんだ。
こんなことを聞いて、黙ってはいられない。
私はトイレを飛び出して、総務部へ向かった。
「失礼します」
勢いで飛び込んだものの、なにか用があるわけではない。
どうしようと困っていると、部長の前で頭を下げている女子社員の姿が目に入った。
「なにか用?」
「えっと、あの……」