冷たい上司の温め方

入り口近くのデスクにいたイケメン社員が私に声をかけてくれた。

笹川さんと同じくらいの歳だろうか。
サラサラの髪が印象的で、とてもさわやかだ。


「あの……人事、ですが……」


人事だからどうだっていうのよ。と自分に突っ込みを入れながら、なんと言おうか頭をフル回転させる。


「人事の人が誰に用かな?」

「えっと……あの……」


もう無理だ。
「間違えました」とかなんとか言って、出て行こうかと思った。

だけど、あのトイレの女が、部長の前で頭を下げる女子社員をチラチラ見てクスクス笑っているのが見えて、ブチッと堪忍袋の緒が切れる音がした。


「あの人に用があってきました」


名前も知らないトイレの女を指差した私は、ツカツカと歩みよる。

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