冷たい上司の温め方
「失礼します。人事の麻田と申します」
「はい。人事がなに?」
「失礼ですが、あの人になにをしたんですか?」
「はっ?」
私が部長の方を指差すと、周りの社員も仕事の手を止めて私を見つめる。
「なに言ってるの。彼女は失敗して叱られているの。私には関係ない」
『ちょっとやりすぎたかもよ。あの女、泣きそうな顔してたもん』
私はわざと大きな声を張り上げた。
「な、なに?」
「なにって、さっきトイレでそうおっしゃってましたけど?」
明らかに慌てた様子の女は、もうひとりに視線を送ったけれど、完全に無視されている。
そんなものよ。
あなたたちに元々絆なんてもの、ないの。
ただ他人の悪口という醜い感情でつながっていただけ。