冷たい上司の温め方
「葛谷(くずたに)。どういうことだ?」
私の声を聞いた総務部長が、やって来た。
「いえ……」
「安藤は、この書類を昨日のうちに送付する手配をしたと言っている。
それなのに、ここにある。
これがどれだけ重要な物か、わかっているな」
「はい……」
部長は葛谷さんをにらみつける。
「安藤は、他にも急ぎの郵便物があると言ったお前に預けたと」
そういうことか。
預かっておきながら、送らなかったんだ。
「いえ、あの……知りま、せん」
「葛谷!」
部長の怒鳴り声で、フロアに響いていたキーボードを打つ音がピタリと止まる。
「安藤は、最後まで自分でしなかったことを反省している。
それなのに、お前はなんだ。知らないだと?」
「す、すみません」