冷たい上司の温め方
「あんなのが仕事だとは言えない。
たまにはと思って誘っただけだ」
メガネのフレームをあげながら、やっぱり冷たいセリフ。
だけど、楠さんが誘ってくれるなんてなんだかうれしい。
笹川さんが知っている居酒屋に着くと、個室に案内された。
「シモベ。メニュー」
「はいはい。でも、楠さん、飲めないんですよね」
私が思わず漏らした言葉に、眉間にしわを寄せ笹川さんをにらむ。
「笹川」
「すみません。だって、すぐにバレるでしょ」
それもそうだ。
「笹川さん、ビールでいいですか?」
「うんうん」
「楠さんは、オレンジジュース?」
「なに?」
こわっ。
ちょっと冗談を言っただけなのに、そんなににらまなくたって。
「ウーロン茶だ」