冷たい上司の温め方
なにが大丈夫なのかわからないけど、正直に「いません」と答える。
「いるわけないだろ」
突然口を挟んだ楠さんは、枝豆を口に入れる。
「なんでですかー。わからないでしょ? 私だって、モテる……」
自分で言っておいて情けなくなる。
今までの人生、モテキなんて一度もなかった気がする。
「誰がモテたって?」
楠さんのイジワル!
「いいじゃないですか。ほっといてください」
男運はよくなかったな。
浮気されたし、貢がされたし……ロクな思い出がない。
「俺は好きだけどね。
麻田さんって、裏表がない感じだし、いつも一生懸命だし」
笹川さんの『好き』という言葉に、無駄にドキドキする。
「へぇ、それなら付き合えばいいじゃないか」
「だって。上司のお墨付きだよ。付き合っちゃおうか」