冷たい上司の温め方
ダメだ。
こんなに甘い言葉、久しぶりすぎて心臓が止まりそうだ。
だけど……笹川さんはかわいそうな私を慰めてくれただけだと、ちゃんとわかってるよ?
「楠さんはいないんですか?」
私は反撃に出た。
言われてばかりじゃ、悔しい。
「女なんて腐るほどいる」
「またー」
楠さんの部屋に、女の影なんて少しもなかったけど?
もしかして、不特定多数の遊び相手ってこと?
このマスクで甘い言葉を囁かれたら、多分女は落ちてしまうだろう。
だけど、楠さんの愛の囁きなんて、想像できない。
「お前、ひとりでなに妄想してるんだ」
「いえ。なんでもないです」
時々ツボをついた発言をする楠さんと、盛り上げ役の笹川さん。
そして、いじられ役の私。