冷たい上司の温め方
掃除している遠藤さんを見下す人達に憤りも覚えたし、私は絶対に誰かの価値を見た目で決めたりしないと強く思った。
「そういえば、楠君から聞いたわよ。
総務のあの子、やっつけたらしいじゃない?」
「いえ……ただ言いたいこと言ってしまっただけで」
「あなたらしいわね」
クスクス笑う遠藤さんは、私の洗ったモップを片付け始めた。
「新人なのに"生意気だ"と言われても仕方がないようなことを言ってしまったかもしれません」
「んー」
遠藤さんは作業の手を止め、再び口を開く。
「それは、生意気とは違うわ。
相手が上司であれ、正しくないことは正しくないの。
それを見て見ぬふりをしている会社は、潰れていくのよ。
正しいことを正しいと言い続けるのはとても大切なこと」