冷たい上司の温め方
「頑固だな」
「楠さんのシモベですから」
「フッ」
一瞬、会社では今まで見せたことのないような優しい顔で笑った彼は、会議室を出て行った。
それから、笹川さんの顔つきが変わった。
優しい雰囲気だったのに、鋭い目つきになったのだ。
もしかしたら、よく観察していなければわからない程度の違いだったのかもしれない。
だけど、私にはそう見えた。
楠さんは……相変わらず冷たい表情で、なにも変わらない。
ふたりはどういう基準で首切りをするのだろう。
私にはさっぱりわからない。
鍛えれば使えそうと言っても、そんなの見た目じゃわからない。
「麻田、トイレ行って来い」
「は?」
別に今、行きたくないんですけど……と思ったけれど、おそらくなにかしらの情報を仕入れて来いということだろう。