冷たい上司の温め方
もしかして、これ、ずっとやるの?と不安になったころ、ようやく噂話を耳にした。
「ねぇ、知ってる? 首切り屋が動きだしたらしいよ」
「そうなの!」
あれ……リストラの件が漏れている?
「おとなしくしてなくちゃね。
なんでも一度目をつけられたら、徹底的に調べられちゃうらしいよ。
過去に何人も、経費の個人使用がバレて、切られてるし」
「怖いわね。とにかく頑張って働かなきゃ」
その後、声は遠ざかっていった。
人事に戻ってリストラの件が漏れていることを楠さんに耳打ちすると「漏らしたからな」と平然とした顔をしている。
えぇっ、そうなの?
こういうことって、内緒で進めるものじゃないの?
「お前の役目は終わり」
「は?」
「広がっていることがわかればいい」