冷たい上司の温め方
なに言ってるんだろう……。
首をかしげていると、笹川さんが私を手招きする。
「リストラがあるってわかった時点で、必死に頑張りはじめる人はまだいいんだよ。
問題はそうじゃない人。今までの不正をもみ消そうと動きだす人が現れるんだ」
私にそう耳打ちした笹川さんは、デスクの上の書類を指差した。
そこには、営業部の人の名前が書いてある。
この人が、そうじゃない人、なの?
笹川さんに確認する意味で、「この人?」と心の中でつぶやきながら書類を指差すと、彼はコクンと頷いた。
もう、始まっているんだ……。
「笹川、悪いんだが、大阪支社に飛んでくれないか?」
私達が話していると、楠さんが口を挟んだ。
「それはまた急ですね。なにか?」