冷たい上司の温め方

「どうぞ、お座りください」


飯田さんは苦い顔をしている。
三課に呼ばれることの意味を理解しているに違いない。


「早速ですが……ここ一年の社用車の利用状況について調べさせていただいたところ……」

「社用車?」

「そうです」


私が事前に見せてもらった資料には、飯田さんが使っている社用車の走行距離とガソリン代が書かれていた。


「ここに営業日誌があります」


楠さんがそう言ったとき、飯田さんの顔色が変わった。


「たとえば……六月十三日。
行かれた営業先を最短距離で結んでも、二十八キロほどです。
ですが、こちら」


楠さんは走行距離が書かれている資料を指差した。


「たった十キロほどですね」


それって……実際は行っていないということ?

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