冷たい上司の温め方

「それはきっと、書き間違えたんだ」

「そうですか。そんな日が月に半分ほどあるのですが」


そう指摘された飯田さんは、黙り込んでしまった。


「私も、それなりに実績を残している方なら、少々の息抜きなど目をつぶります。
ですが、飯田さんはここ数年、一度もターゲットを達成されていない」

「それは、ターゲットが高すぎるんだ」


飯田さんが反論に出た。


「それについても確認しました。
市場の動向から見ても、無謀なターゲットではありません。
実際一部の担当先をあなたから担当を引き継いだ新人が、あなたの倍の実績を上げています」


飯田さんは唇を噛みしめ、楠さんを見つめる。

感情の波もなく淡々と話す楠さんとは対照的に、飯田さんは顔を真っ赤にして震えだす。

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