冷たい上司の温め方
「楠さん」
「なんだ」
「どうして、ずっと人事にいるんですか?」
私はずっと聞きたかったことを単刀直入に聞いてみた。
「他に行くところがないからじゃねーの?」
嘘ばっかり。
「私、楠さんのシモベなんてすぐに脱却してやると思ってたんですけど、シモベも悪くないかなと思ってるんですよね。
最近、楠さんのことちょっと尊敬してきたし」
「なんの告白だよ」
楠さんはウーロンハイを手にしたまま、フッと鼻で笑う。
「本当は、人事にいたいわけがあるんじゃないですか?」
「どうだろうな」
もし彼が『正義を守りたい』と言ったら、『なんとかライダーですか?』と突っ込む予定だったのに、実にオトナの返しで、がっかりだ。
「なんでそんなに秘密主義なんですか?」