冷たい上司の温め方

目の前に出されたアスパラベーコンを箸でつかみながら尋ねると、楠さんはウーロンハイを再び口にした。


「そもそも、なんでお前に秘密を明かさないといけないんだ」


ごもっともです。
この人は、絶対に羽目を外さないタイプのようだ。


「だってその方が仲良くなれますよ」

「あのなぁ」


彼はメガネを外してテーブルに置いた。

メガネを外すと、ずっと雰囲気が柔らかくなる。
人間らしいというか、なんというか。

少しだけ近づけた気がする。


「お前と仲良くなると、メリットがあるのか?」

「あります、あります。このかわいい唇でチューとかしてあげます」

「かわいいとか、自分で言うな」


そうは言いつつも、顔が緩んだ楠さんを見て、私もうれしくなった。

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