冷たい上司の温め方

やっと、会社の顔からプライベートな顔に変わった。

熱を出した夜、苦しさに顔をゆがめていたように、思ったことや感じたことをそのまま出してほしい。
そういうことがないと、首切りの仕事は辛すぎる。


「楠さん、休みの日はなにしてるんですか?」

「別に、なにも」

「あれー、腐るほど女がいるのに?」


楠さんは白身のお刺身が好きなようだ。


「お前よりは忙しいな」


楠さんは再びウーロンハイを口にしている。
少しは飲めるようだ。


「今度一緒に遊びましょうよ」

「だから、メリットは?」

「だーかーら、チュー」


楠さんが楽しそうに笑うと、うれしくてたまらない。

いつの間にか、楠さんを笑わせることで頭がいっぱいになっていた。

< 218 / 457 >

この作品をシェア

pagetop