冷たい上司の温め方
「そう。お願い」
珍しいと思っていると、すぐに部長も出勤してきた。
「おぉ、山際君、いつもありがとう」
「いえ、とんでもないです」
いつも?
いつも、は私なんですが……。
複雑な思いを胸に自分のデスクに戻ると、楠さんが顔を伏せて笑っているように見える。
「要領悪いな、お前」
「違いますよ。彼女がいいんです」
口を尖がらせて反論したけど、楠さんが会社でも笑顔を見せてくれたことにほくそ笑む。
それに……部長にはわからなくても、楠さんがきちんと見ていてくれる。
それでいい。
「それより、笹川さんは今日戻られますか?」
「あぁ、その件だが……」
楠さんが人事の入り口を指差す。
外に出ろということだろう。
彼について人事を出ると、いつも使う会議室に入った。