冷たい上司の温め方
「人事の新人、知ってる? 女の子」
「うん。噂だけはね。ふたりいるんでしょ?」
「そう。ひとりはいたって普通らしいんだけど、三課にいる方の子、性格最悪らしいよ」
あれ? 私、のこと?
おそらく彼女たちは、私がその本人だということを知らないのだろう。
会話はそのあとも続いた。
「そうなの? どうして?」
「なんだか、他人の粗探しして上司にチクッて喜んでるんだって。
それに、三課の権力を振りかざして、新人のくせに偉そうなこと言ってるって。何様よ」
チクッてなんて、ない。
確かに、良くない噂が本当かどうか、自分の目で確かめには行くけど、粗探しとは違う。
「最低。でもどうして知ったの?」
「あ、うちの新人が二課の新人と友達らしくて、その子が言ってたらしいよ」