冷たい上司の温め方
「三課がなにか?」
聞き慣れた声がして顔を上げると、その集団に楠さんが話しかけている。
「あっ、いえ……」
「うちの新人は優秀ですが?
少なくともあなたたちのように、くだらない噂に振り回されたりはしません」
相変わらず冷たい表情の楠さんは、メガネの下の目が鋭い。
「すみません。失礼します」
その人達は彼を見て、慌てて立ち去った。
「シモベ、飯食ってないじゃないか」
楠さんは溜息を吐きながら私の隣の席に座った。
「……はい」
食べられるような気分じゃない。
喉を通らないというのは、こういうことを言うのだと思う。
こんなことくらいで動揺するなんて情けない。
そう自分を奮い立たせようとしたけど、簡単にはいかない。