冷たい上司の温め方
他人の人生を左右するような仕事をしていれば、こういうことだってきっとあるのに。
だから楠さんは嫌なら他の部へ転属願いを出せって言ってくれたんだろうし。
「まだ時間あるな」
「なんのですか?」
「昼休憩」
時計を見ると、まだ三十分ほど時間がある。
「外に出るか」
「でも、食べてないですし」
「食えないくせに」
少し意地悪な言葉だったけど、私はコクンと頷いて、彼と一緒に社外に出た。
会社の裏には、小さな公園がある。
片隅にあるベンチに座ると、楠さんが自販機でコーヒーを買ってきてくれた。
「ありがとうございます」
楠さんは私の隣に座ると、コーヒーのプルトップに手をかけた。
「あーあ、コロッケ食べそこねちゃった」
精一杯の強がりだった。