冷たい上司の温め方
「あれくらい、今度おごってやる」
「ホントですか? やったー。ランチゲット」
思い切りはしゃいで見せた。
そうでないと泣きそうだったから。
「お前が言ったんだぞ」
「なにを、ですか?」
「ひとりで我慢するな。話を聞くくらいできるって」
どうしてこの人は、このタイミングでそんなに優しいことを言うのかな。
いつも冷たいくせして。
「それは……」
言葉が続かない。
酔ってないのに、泣きたくない。
「くそー!」
「なんだよ、突然」
天を仰いで声をあげると、楠さんが驚いている。
「もっと強くなりたーい」
「この歳で、青春ドラマか」
ムカつくくらい晴れ渡った今日は、雲ひとつない。
鼻で笑った楠さんは、コーヒーを口にして、私と同じように天を仰ぐ。
「眩しすぎるな」
「えっ?」