冷たい上司の温め方
楠さんに視線を移すと、空を見上げたまま再び口を開く。
「眩しいところは慣れてない」
「それじゃあ、カビが生えますよ?」
ほんの冗談のつもりだったけど……。
「そうだな。ずっと三課に引きこもってるからな」
三課は、いわば影の存在だ。
ホントは……皆が働きやすいように動きまわっているけれど、実際に注目されるのは首切りの時だけだ。
とてつもなくダークな課。
「ずっと、お前を引っ張ってきたこと、後悔してた。
女のお前には辛い仕事だったかもしれないと」
楠さんは今度はブランコに乗る子供に視線を移した。
「あんなに無邪気には笑えない場所だしな」
楠さんが少し悲しげに見える。
「なに言ってるんですか。正式ルートでは就職できなかったんでしょ?
もしもここにいなかったら、今頃田舎に帰ってたんです。
だから、私は後悔してないです」