冷たい上司の温め方
笹川さんの言いたいことが良くわかる。
いつも他人を寄せ付けないような冷たさを漂わせているくせに、物事をすごく深く考えている気がする。
この人は解雇された後どうなるのかとか、他のポジションなら能力を発揮できるのではないかとか、常に真剣に。
「会社都合のリストラって、今までなかったんですか?」
「うーん。俺は経験がないんだ。
ただ、楠さんが新人の頃、業績悪化でかなりの人を切ったみたいだよ」
楠さんが新人ということは、十年くらいは前の話、か。
「これ、部長に聞いたんだけどさ」
笹川さんは小声で話し出した。
「新人だった楠さんは、当然なにかできるわけじゃなく、毎日毎日クビ宣告や、拒否する人への精神的圧力やら、黙って見ていることしかできなかったんだ。
だけど……」
「だけど?」
笹川さんは小さく頷いて、再び口を開く。