冷たい上司の温め方

やっぱり……。

仕事と同じだ。
約束の時間より必ず早く準備している楠さんは、社会人の鏡だけど……プライベートもそうなんだと思うと、ちょっと笑える。
とことん真面目な人なんだ。


バッグを持って部屋を飛び出し、車に駆け寄ると、私服の楠さんが見えた。


「おはようございます」

「おはようって、もう十一時だ」


窓を開けて嫌味な一言。
それに加えて相変わらずの仏頂面だけど、約束を覚えていてくれたなんて、ちょっと感激だ。


「すみません。だって、まさか本気だとは……」

「そうか。なら帰る」

「待って!」


本気でアクセルを踏みそうな楠さんを止めると、「乗れ」とこれまたぶっきらぼうに言われ、助手席に乗り込んだ。


楠さんの私服は、いたってシンプルだった。

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